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東京高等裁判所 平成2年(行コ)29号 判決 1991年2月28日

東京都港区東新橋二丁目七番八号

旧商号

八大産業株式会社

控訴人

株式会社八大コーポレーション

右代表者代表取締役

川口勝弘

右訴訟代理人弁護士

土屋東一

小串静夫

東京都港区芝五丁目七番一号

被控訴人

芝税務署長 渡辺淑夫

東京都千代田区霞が関三丁目一番一号

被控訴人

国税不服審判所長 杉山伸顕

被控訴人両名訴訟代理人弁護士

中村勲

被控訴人両名指定代理人

合田かつ子

山田昭

被控訴人芝税務署長指定代理人

澤田利成

倭文宣人

被控訴人国税不服審判所長指定代理人

渡部義信

中村有希郎

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人芝税務署長が昭和六〇年四月三〇日付けでした控訴人の昭和五八年七月一日から昭和五九年六月三〇日までの事業年度分の法人税の更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知並びに法人税の更正及び過少申告加算税の賦課決定(ただし、3項の裁決により一部取り消された後のもの)を取り消す。

3  被控訴人国税不服審判所長が昭和六二年四月一四日付けでした前項の通知並びに法人税の更正及び過少申告加算税の賦課決定に対する審査請求についての裁決を取り消す。

4  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

二  被控訴人ら

主文同旨

第二当事者の主張

当事者双方の主張は、次のとおり補正するほか、原判決の事実に摘示されたところと同一であるから(原判決三枚目表一行目から同二二枚目表四行目まで。別紙一及び二を含む。)、これを引用する。

1  原判決一二枚目裏末行の「訴外住宅都市整備公団」を「訴外住宅・都市整備公団」に改める。

2  同一八枚目裏一行目末尾に「控訴人は、住友建設から本件土地等を含むその地域一帯の土地の地上げを請け負い、同社との間に不動産売買及び立退契約を締結し、金員の授受及び所有権移転登記を了したものの、右の地上げの完了に至らず、このため、本件事業年度末までには地上げの対象とした土地の全部の引渡しが不能となり、本件土地等についてもその引渡しが行われなかったことにより、売却代金に関し、本件事業年度の所得金額等に誤りが生じたので、本件更正の請求をしたものである。」を加える。

3  同一八枚目裏五行目の「原告から」を削り、同一九枚目表五行目の「清算」を「精算」に改める。

4  同二〇枚目裏四行目の「契約解除の場合ではなく」を「契約解除により土地譲渡利益に見合う損失が発生した場合ではなく」に改める。

第三証拠

証拠関係は、原審及び当審訴訟記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  本件における争点は、控訴人の本件事業年度の所得金額の計算に当たり、

(1)  控訴人と住友建設が本件土地等につき締結した不動産売買及び立退契約が、通常の売買契約であって、本件事業年度中に売買代金全額の授受及び所有権移転登記が行われ、本件土地等の引渡しがされたから、その売却収入は益金に計上すべきものか(被控訴人税務署長の主張)、それとも、右不動産売買及び立退契約は、控訴人が住友建設から請け負った本件土地等を含む一帯の土地の地上げを行うため、同社から必要な資金を借り入れたのに伴い、その返済を担保する目的で売買の形式を採り、所有権移転登記を行った特殊な契約であって、未だ地上げの対象である土地全部につき地上げが完了しておらず、全物件の実測、売買代金の精算及び残物件の所有権移転登記が未了で、本件土地等の引渡しがあったとはいえないため(後日控訴人と住友建設間に成立した和解において右不動産売買及び立退契約が解除され、受領済みの売買代金が返還された。)、その売却収入は益金に計上すべきものでないか(控訴人の主張)

(2)  京成電鉄と住宅・都市整備公団間の谷津遊園跡地の売買取引につき、控訴人が京成電鉄の代理人京成不動産から受け取った仲介手数料は三億円であり、このうち控訴人が売買手数料として経理処理をした一億五〇〇〇万円についてはその使途が不明であるため損金算入を否認すべきものか(被控訴人税務署長の主張)、それとも、右仲介手数料は一億五〇〇〇万円であり、残額一億五〇〇〇万円については京成不動産から第三者に支払われたものであるため損金として益金から減算すべきものか(控訴人の主張)

の二点である。

当裁判所も、右(1)(2)の各争点について、被控訴人税務署長の主張事実が認められるので、被控訴人税務署長がした本件事業年度分の法人税の更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知並びに法人税の更正及び過少申告加算税の賦課決定(ただし、被控訴人国税不服審判所長がした裁決により一部取り消された後のもの)は適法であると判断する。その理由は、次のとおり補正するほか、原判決の理由に説示するとおりであるから(原判決二三枚目表二行目から同二八枚目七行目まで)、これを引用する。

1  原判決二三枚目末行の「原告から」を削る。

2  同二三枚目裏九、一〇行目の「原告代表者川口勝弘」の前に「原審及び当審における」を、一〇行目の「乙第二二号証の一」の前に「成立につき争いのない甲第二ないし第一三号証、乙第六ないし第一六号証、弁論の全趣旨により原本の存在及び成立を認める」を、末行の「本件土地等に関して」の前に「住友建設は、本件土地等を含む一帯の土地の開発を企画し、対象物件全部を買収した暁には、自ら建物を建築して土地、建物とも転売するか、あるいは更地のまま転売し、買主から建物建築の発注を受ける目的で、控訴人にその買収に当たらせていたこと、右の買収においては、住友建設は、控訴人が買収に成功する都度、控訴人から買収物件を買受け、中間者である控訴人名義を省略する方法により所有権移転登記を経由していたこと、対象物件全部の買収が完了しない段階であっても、買収物件についてはその都度現実に引渡しがなされ、あるいは住友建設と前所有者及び控訴人との間で即決和解をすることによりその履行を確保する措置が採られていたこと、控訴人が対象物件全部を買収することができた場合に改めて控訴人が住友建設又は第三者に転売するとか、また、これとは反対に、控訴人が買収できなかった場合には住友建設に売り渡した物件を買い戻すというようなことは、控訴人と住友建設間で予定されていなかったことが認められ、これらのことから明らかなように、」をそれぞれ加え、同二四枚目表二、三行目の「地上げのためにする」を削る。

3  同二四枚目裏五行目の「完了していなかった」を「完了していなかったし、土地の実測面積に応じた売買代金の精算もされていなかった」に、八行目の「乙第二二号証の一」を「前掲乙第二二号証の一、弁論の全趣旨により原本の存在及び成立を認める乙第一七号証」に、九行目の「本件土地等の」を「本件土地等の一部については」に、一〇行目の「認められるから」を「認められ、控訴人の主張のように未だ一部の物件につき現実の引渡しがなされておらず、また、土地の実測面積に応じた売買代金の精算がされていないものがあったとしても、本件土地等につき所有権移転登記が経由された時点で税法上売却収入の原因となる権利が確定し、所得として実現したというべきであるから」にそれぞれ改める。

4  同二六枚目表八行目の「乙第一七、一八号証」を「前掲乙第一七号証、第二二号証の一、原本の存在及び成立につき争いのない乙第一八号証、第二一号証」に改める。

5  同二七枚目表三行目の「訴外住宅都市整備公団」を「訴外住宅・都市整備公団」に改める。

6  同二七枚目裏二、三行目の「乙第二〇号証の一ないし三、第二三号証の一、二」を「弁論の全趣旨により原本の存在及び成立を認める乙第二〇号証の一、原本の存在及び成立につき争いのない乙第二〇号証の二、三、乙第二三号証の一、二」に、一〇、一一行目の「所有権移転登記も完了し引渡しも済んだ」を「所有権移転登記が完了し、引渡し又はこれに代えてその履行を確保するための措置も済んだ」にそれぞれ改める。

7  同二七枚目裏一〇、一一行目の「原告代表者川口勝弘」の前に「原審における」を加える。

二  控訴人の被控訴人国税不服審判所長に対する裁決の取消請求は、本件通知並びに本件更正を適法としたことをもって裁決の瑕疵と主張するもので、結局、裁決固有の違法を主張するものではないから、失当といわなければならない。

三  以上のとおり、控訴人の被控訴人らに対する請求は、いずれも理由がなく、これと同旨の原審の判断は相当である。よって、本件控訴は理由がないので、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大石忠生 裁判官 渡邉温 裁判官 犬飼眞二)

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